門前の小僧、『維摩経』を読む  維摩会(春秋館)で参禅ライフ14

仏と菩薩と聖声聞と独覚との過去現在未来のすべてに礼拝し奉ります。

それでは、一章の「仏国品」の続きを、ご一緒に読んでいきましょう。

方便は是れ菩薩の浄土なり。菩薩成仏の時、一切の法に於て方便無礙なる衆生来って其の国に生ぜん。

三十七道品は是れ菩薩の浄土なり。菩薩成仏の時、念処(ねんじょ)・正勤(しょうごん)・神足(じんそく)・根(こん)・カ(りき)・覚(かく)・道(どう)の衆生来って其の国に生ぜん。

 

「三十七道品」とは、ニールヴァーナに到達するための

三七種類の実践修行をいいます。

具体的には、四念処、四正勤、四神足、五根、五力、七覚支、八正道のことで、

合計が37になります。

中村元博士の『ブッダ最後の旅』(中村元訳、岩波書店)を参考に、

これらを解説致します。

 

「四念処」とは、悟りを得るための4つの観想法です。

 ①身念処(自他の肉体が不浄であると心に思い浮かべること)、

 ②受念処(もろもろの感受作用は苦であると心に思い浮かべること)、

 ③心念処(もろもろの心作用は無常であると心に思い浮かべること)、

 ④法念処(あらゆる存在は無我であると心に思い浮かべること)をいいます。

 

「四正勤(ししょうごん)」とは、4つの正しい努力のことです。

 ①律儀断(りつぎだんと読み、まだ生じていない悪を生じさせないよう勤めること)

 ②断断(だんだんと読み、すでに生じた悪を断とうと勤めること)

 ③随護断(ずいごだんと読み、まだ生じていない善を生じさせようと勤めること)

 ④修断 (しゅうだんと読み、すでに生じた善を増すように勤めること)

 

「四神足」は四如意足ともいい、超自然的な神通力を得るための4つの基です。

「神」とは、この場合「妙用の図りがたい」という意味で、「神通」を指します。「足」とは因(よりどころ)を指し、神通を起こす因なので、

 神足と名付けられています。

 ①欲神足(すぐれた瞑想を得ようと願うこと)

 ②勤神足(すぐれた瞑想を得ようと努力すること)

 ③心神足(心をおさめて、すぐれた瞑想を得ようとすること)

 ④観神足(智慧をもって思惟観察して、すぐれた瞑想を得ること)

 

「五根」というと、眼・耳・鼻・舌・身の5つの感覚器官を想像しますが、

この場合はそうではなくて、「三十七品菩提分法」に含まれる「五根」とは、

信根・精進根・念根・定根・慧根」を指します。

「悟りに至るための5つの能力」のことで、これらの力を使って解脱すると

されています。

 ①信根(信仰。正しい教えを信じ、解脱を生じる力にする)

 ②精進根(努力。正しい実践を続け、解脱を生じる力にする)

 ③念根(憶念。正しい教えを強く想うことで、解脱を生じる力にする)

 ④定根(禅定。禅定をすることで、解脱を生じる力にする)

 ⑤慧根(智慧智慧を得ることで、解脱を生じる力にする)

 

「七覚支」とは、悟りを得るために役立つ7つの事柄という意味です。

「七菩提分」とも言います。

心の状態に応じて、存在を観察する上での注意・方法を七種にまとめたものです。

 ①沢法(教えの中から真実なるものを選びとり、偽りのものを捨てること)

 ②精進(一心に努力すること)

 ③喜(真実の教えを実行する喜びに住すること)

 ④軽安(身心を軽やかに快適にすること)

 ⑤捨(対象への執着を捨てること)

 ⑥定(心を集中して乱さないこと)

 ⑦念(おもいを平らかにすること)

 

そして、「八正道」とは正見、正思、正語、正業、正命、正精進、正念、正定

8種を指します。

少しでも悟りへと近づけるように、日々努力したいと思います。

 

参考文献:『ブッダ最後の旅』(中村元訳、岩波書店)ほか

 

インドのビハール州中部にあるナーランダ仏教遺跡(筆者撮影)